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海月屋・辻正仁『短めでお願いします』

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ともだちの文様





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写真は本日届いた友人からのプレゼント。

高校の時の友人で、現在は木工房をやっておる。
木を素材とした家具やらドアやら色んなものをオーダーメイドで製作しているのね。

確か共通の友人の家の表札も彼が作ったものだったと記憶しているがどうだったかな?

高校の時、同じクラスだったわけだけど、その時に特に仲が良かったというわけではない。なんと言うか、仲の良い友達を介して彼とも親しく話はしたし、そういう何人かでエッセイやら小説を書いて集めたものを装丁して同人誌的なものを作ったりとかそういうことはやっていた。なので、冗談言い合って笑ったりはしてたよ。
ただ、二人でじっくり何かの話をしたりとか、お互いの考えを伝えあったりと言う付き合いではなかったんだな。

元々、彼はオレのように何かにつけてギャァギャァ騒いだり主張するタイプでもないし、あまり積極的に人前で自分の思っていることを伝えるタイプではないように見受けられた(多分、実際にそうだろう)。「寡黙」という訳ではないんだけどね。穏やかであまり怒ったりもせず、でも愉快な話はできる人であった。
物静かではあるけど、陰気臭いわけではなく、朗らかな人という印象。

という記憶。

なので、自ら他の者を先導してなにかやるという方向にはいかなかったけど、例えば学校祭とかそういう行事で何か(行灯とか戦隊モノのコスチュームとか、怪物の衣装や仕掛けとか)作るって時には、彼が活躍するみたいな。
「オレが作るよ」っていうんじゃなくて、周囲から「こういうの作ってよ」と任されるような感じだったな。

現在の職からもわかるように、そういう「造る事」ができる人なのだ。
そんなアレで、卒業後も自主映画作りとかに参加している流れで、彼とは顔を合わせている。その時もやっぱり複数人の友人との集まりの中でね。

その後、彼が東京に行って、木工職人的な仕事についたということや、その後独立してそのまま東京でやっているというのは別な友人を介して知ってはいたけど、直接のやりとりはしたことがなかったのね。

その彼から今年の初めくらいに、facebookでオレの書き込みにリアクションがあった。
名前を見つけて「おぉ〜」と思いメッセージを入れてみたら返信を送ってくれた。
昨年から、拠点を南アルプスに移して工房をやっていると書いてあり、自分の興味の範疇での印象から「縄文の里だね」って返してみたら、彼がその場所に移住した理由のひとつが、そこが「縄文の里」だったかららしい。
小学校の頃から縄文時代に対して興味を持っていたそうだ。
なので、おそらくオレよりもはるかに縄文時代に関しては造詣が深いハズ。
でもそういうことを彼はことさらアピールする人ではないのです。

知り合ってから何十年も経過してからお互いの共通項ができて、そんなタイミングで再び繋がると言うのも不思議なものだ。

彼が縄文時代に惹かれる理由の一つに「1万年以上大きな紛争がなかった事」を挙げていた。これはオレも興味を持っていることでもある。
〜 同一地域でこれだけ長い期間に渡って戦争や略奪、大量虐殺などの形跡が見られないのは人類史を通して、縄文時代の日本しか見当たらないと言うくらい稀有なことらしいのだ。その後弥生人が渡来して来た時も、とくに争いもなかったようだし(溶け込んだ人もいれば、離れた人もいるようだけど)。
要するに彼らは長い間「上手いこと仲良く」やっていたんだろう。〜

友人のそんなメッセージを読んだ時に、高校時代の彼の佇まいが初めてよく理解できた気がした。
自分なりにではあるけれど、「なるほどね」って。

で、彼が製作したペンダントを送ってくれた。
しばらく品切れになっていたそうで、再度製作時期になったので送ってくれたのです。写真の右側がそれ。
オレ用の特別仕様として、ストッパーには曰く「近所で取れた」鹿の角が使用されている。鹿の角が近所で見つかる場所なのね…。
木のヘッドに縄文の文様を模したデザインが施されている。

もう一つは『釈迦堂遺跡出土縄文前期板状土偶型ネックレス』という名で、これから博物館のショップなどでの販売を考えているのだそうだ(1200円で販売予定とのことなので、よろしく)。
商品のネーミングとしては長くてややこしい感じがするし、もしかしたら何かキャラクター的なネーミングの方が受けるのかもしれないけど、コッチの方が実にシンプルで実直でいいなとオレは思う。
モチーフとなった縄文文化への敬意や彼の思いがキチンと込められている気がするし、「そのまんまな名前」ってところにオレはちょっとしたユーモアも感じるんだけど、どうなんだろうね?

当初、ネックレスを送ってくれると聞いた時に「ライブの時につけよう」とか思ってたんだけど、届いたものを見て「むしろ普段から身につけようかな?」とかとも思っている。
ありがとう。

お礼にというか、縄文文化にあやかって物々交換よろしく、こちらからは自分のCDを送らせてもらった。

メッセージのやり取りの後で、彼はYouTubeで公開してるオレの動画も観てくれたらしいのだが、その中で『ウキウキライフ』と『神様の調べ』が良かったと教えてくれた。実は、彼と話した時に聴いてもらいたいなと思ったのがその2曲だったので、まさにドンピシャというか、わかってるな〜って思ったよ(笑)。

そして、オレも今ならわかるんだけどね。

高校時代には彼のことを失礼かもしれないけど「物腰が柔らかくて穏やかな人物」くらいの印象しか持ってなかったと思うんだ多分。
でも彼のようなタイプの人って、言葉や文章にして自分の思いや考えを表明するのは苦手かもしれないけど、そういう上手く表せないことが自分の中で醸成していって、それは言葉ではなくて佇まいの中に滲み出てくるんだよね。
若い頃はそういうことにまったく思い至らなかったけど。

例えば、縄文人達もおそらく今ほどボキャブラリーが発達していない中で、自分らの思想やら感じていることやアイデンティティみたいなものをあの独特の文様によって表現したんだと思うのね。土偶や生活で使う土器のなかにそれを染み込ませるように。
そんなふうにして僕の友人も、木を切ったり削ったりつなぎ合わせているんだろうな。

そして多分、縄文人の中にも騒ぐのが好きなお調子者とかもいて、やっぱり収穫があった時とか、なんかの行事の時に浮かれて歌ったりしてたんだと思うのよ。

少年時代の地層を掘り起こしてみたら、新たにそんな思いを発掘できたりした。

興味あればイトウタカシ木工房のサイトもご覧あれ。





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