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海月屋・辻の日々

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私の作曲方法・主に歌詞について(一言の質問に、このブログ史上最多文字数で答えてみた。)

先日のバースデーライブの際に、長時間のために最後まで残れない方とか、途中から途中までしかいられないとか、終了しても終電に間に合うように帰らなければとかでお話しできない方もいると思い、感想やメッセージ、質問などを記入しておいていただける用紙を用意した。
一部はYoutubeにアップした動画番組【円山海月〜MaruyamaKurage〜 2018年1月特大号】にて紹介させていただいている。

そこで一つの質問に答えているのだけれど、いくら説明しても説明が足りないような気がしており、また理解いただける説明ができないような気もしている。

実はこれまでも複数人から同じような質問や感想をこれまでも何度かいただいたことがあり、「意外と聴く人の関心というのは、自分の関心とは別なところにあるものなのだな」というのと(そのことに関して特別不満があるわけではない。ただそう思うだけ)、正直、いまひとつ質問される方が『何が知りたくて』その質問をされてるのかが毎回よくわかっていないままに答えているような気がするのだ。

そこで、こういう回答で良いのかどうかは分からないのだけど、その質問に答えるためというか、それをきっかけに自分が曲作りの際に半ば無意識的にやっていることをすこし整理してみようかと思い、コレを書いてみることにした。
あと、たまに同じように曲を作ってる人とか、それがなかなかうまくいかない人などから「辻さんはどうやって曲書いてるんですか?」なんて聞かれたりもするので、(そういう質問してくれるのは嬉しいのだけど、でも、どうせならヒット曲あるとか人気がある人に聞いた方が良いのでは? とも思う)もし参考になるようなことがあればお使いください。

かなりな長文になるんじゃないかと思うので、特に関心のない方はここでお別れです。
関心ある方はお時間あるときにどうぞ。

で、その質問というのが、現在手元に用紙がないのだけれど概要としては
「なぜ辻の曲には女性が出てくる曲が多いのか? また描く女性の中には実在の人物もいるのか?」
というもの。
これまでも「ラブソングが多い」とか「女の人がしょっちゅう出てくる」みたいなことを言われたりしたのですよ。

これ、質問されたことにそのまま答えるとしたら
「なぜ女性が出てくる曲が多いのか?」に関しては「そんなつもりはない」
「実在する女性はいるか?」については「そういう場合もあるし、そうでない場合もある」
という回答になる。

これがとても正直で、質問に対して素直に答えた結果なんだが、なんだかこれだと自分がとても不親切な人間に思えてくる(笑)
おそらく質問された方も教えて欲しかったことはもっとなんか違うものなのだろうと思うのだ。
もし、「あ、これが聞きたかったの」ってことであれば、質問した方はこの後読まなくても大丈夫です。
ただ、「やっぱりもう少しどういう感じで曲を書いているのか知りたい」ということであれば、今度はこちらの説明が困難になってくる。
というのは、曲作りの過程のどっからどこまでを説明すれば良いのかがさっぱり分からないってのと、曲によって造り方が違うから何をどう説明したらいいのかが分からないというのもある。

加えて言えば、なにか特定の一曲についてとかで、具体的にどうやって書いたかとか説明していわば「種明かし」みたいなことはしたくないというのもある。
聴く側の解釈を制限したくないのです。

書いた本人が言っちゃうと、そのように解釈するのが正解みたくなっちゃう気がするのだ。

それは書き手側としては避けたかったりするし、まぁどう説明すればよいのか分からないってのが正直なところだ。
「去年こういうことがあって、そのときにこういう人がこういう態度でいて、それを見たときにこういう気持ちになりました」みたいに説明できることなら、最初から曲を書かずに説明をしていたり、そういう事実と感想を記録した文章を書く。
メロディーつけたりコードを決めたりして、それに乗っけて歌詞を歌ったりしたら余計わかりづらくなるんじゃないかと思うのだ
言葉だけで説明できないものをなんとか表現したいから、リズムとかメロディ、歌い方が必要になるわけで、少なくとも自分はそう思うので曲を書いている。

他の方のライブに行くと、たまに「次の曲は、こういうことがあってそのときに友達がこうなって、それを見てこういう気持ちになった事を歌にしました。聴いてください」みたいなトークして歌う人がいるけど、それはその人の作り方だからいいんだけど、僕としては「いま説明聴聞いたから歌聞かなくていいよ」って気分になっちゃうんですよ。

自分でもたまに『神様の調べ』とかの前に「熊本に行った時の事を」とか説明するけどね。そうした方が曲の導入として分かりやすいかなという場合には。
でも、「それでこんな気持ちになりました」とは言わないよね
確か、最初にこの曲を歌った時は「その時に自分が見た光景は写真には映らないだろうし、感じたことを文章にしても胡散臭くなるだけなので歌にしました」ってな説明をして歌ったのだと記憶している。
あとは、サザンにまつわる自分の体験をサザン風の曲にしてみましたって説明する「眠れぬ夜はサザンを」は、時間があれば具体的なエピソードを紹介するかな? アレはわりと「こういう題材ををこんな技法で曲にしたんですよ」って事が楽しみの一因になる曲だと思うので。
他にも、曲によって紹介する場合の具体例はあるんだけど、曲によってのケースバイケースなんでキリがなくなっちゃうから省略します。



それで、まず大前提として、僕は自分の曲を書くときに、歌詞とメロディとリズムを切り離して考えることがまずありません。時折リズムやテンポ、メロディーを変えたり、時々で歌い回しを変えたりするけど、書き始める段階では当初の構成要素を分離して「メロディは出来上がったから次は歌詞を書こう」とか「歌詞は出来たから、メロディをつけよう」みたいな書き方をしていないのです。
確かに、曲を作り始めた頃っていうのは、どうやって作ればいいのかも分からずにやってたので色々と試したけれど(中にはコード進行だけ最初に決めてってのもあったな)、最終的にあくまでも「自分のやり方」として、いちいち歌いながら作っていくという方法が一番自分にしっくりくるのでそうしている。

ただ、こっから話し始めると長いどころの騒ぎではなくなるので省略。
できるだけ歌詞に話の焦点を絞りましょう。

まぁ、歌詞だけじゃなく曲も含めてなんだけど、僕自身は曲というのは「夢うつつで料理を作ってる」ようなものだと思うのです。
で、ただ夢で料理作っているだけだとなんだか分からない、とても食えたもんじゃないものが出来上がるかもしれないので、そこに「作る技術」というか「火加減」とか「塩加減」とか、「食材の選択」「調理器具は何にするか」みたいなところは意識してるのかな?


で、料理を人様に提供する時って多分食べてくれる人に「おいしい」と言われたいのです。
その料理をどういう食材をどんな調理方法で作ったかを知ってもらいたくて作るわけではないのではないかなと。

だから、作り手の関心ごとは「どう? おいしい?」ってことなのですよ。それで回答として「おいしい」をより具体的に「口の中でとろける」とか「スパイスが効いてるね」とか「このじゃがいもがいい」とか言ってくれると嬉しいとか、「あ、この人は隠し味のスパイスに気づいたんだな」とか「あっちの人が喜んでくれたじゃがいもは結構ああなるタイミングに苦労したけど甲斐があったな」とか「オレはビーフシチュー作ったのに、この人カレーだと思って食ってるな」とか思って喜ぶんですよ。

ちょっと話を質問に戻しましょう。

まず「女性が出てくる曲が多い」とか「ラブソングが多い」みたいなことについて。

これ、本当にそういう自覚がないので、試しに調べてみた。
ちょうど先日52曲歌うってライブやったんで、そのセットリスト使って。
全曲だともうとんでもない数になるんで、サンプルとして52曲あれば、傾向はつかめるだろうと思って。

で、書いた本人から見て、明らかに女性のことを描いたり、明確に女性に向けてなにか伝えてる描写があるなって曲は、52曲中15曲。その中で求愛とか失恋とかの、まぁ「色恋沙汰」を中心にしてるなってのが7曲。

多くはないと思うんだよね。

それで、何故多いという印象を持たれるのか? ってところを考えるとおそらく「君」について歌ったり「君」に語りかけるような意味合いの歌詞、ようするに「君という言葉が使われている歌詞」が52曲中32曲と半分以上になるんだな。さっきの女性を描いてる曲も含めて。

多分コレでしょ?

おそらく巷の歌を聴き慣れた習慣として、男が「君」と歌えばそれは女性を指しているものだと自動的に思っているのではないかと思うのです。もしかしたら「君」が登場するだけで恋愛関係の対象だと思うのかもしれない。

それはそれで構わないです。
そうやって解釈することで、その歌がその方にとってなにか親密なものとか大切なものになってくれるならそれで嬉しいです。

僕自身も無意識のうちにそういう思惑があって書いている曲もあるかもしれない。もしかしたら。

ビーフシチューを作ったつもりでもカレーだと思って食ってくれていいんです。それが「おいしい」のであれば。
ただ、たとえば『ウキウキライフ』みたいな曲を「これは、辻の軍国主義思想を表現した曲だ」とか言われちゃうと「ちょっと待てオイ」ってなるけど。

で、そういう「印象」とは別に、歌詞の中で明らかに恋愛感情的なものが描かれてるものは7曲なんで、これはもういいでしょう。


もうひとつの「描いた女性の中に実在の人物はいるのか」問題(笑)

コレをですね、女性に限らずさっき挙げた32曲の「君」とか「彼女」とかで歌われている人物全部の中で実在者はいるのか? っていうふうにすると
「実在の人物もいるし、想像上の君もいる」ってことになる。

もうちょっと話を広げると、「歌詞に書いてある出来事は実際にあったか?」って話になるだろうけど、「実際にあったことも、想像上の物語もある」ってことです。

で、どれが実話でどれが創作かってことになると、これはもう説明できないです。
というのが、料理の例で出した「夢うつつで料理を作る」ってことになってくるんだけどね。

「夢」って現実の場面も出てくれば、全然知らない場所でやったこともないようなことやってたり、映画で見た場面と現実に体験したことがごちゃまぜになってることとかあるでしょう?
実際にあった場面に現実では見たことない人が出てきたり、行ったこともない場所に知り合いといたり、まったく恋愛感情を持ってない人と恋人同士みたいな設定になってたり…

多分、小説書く人も絵を描く人とかもそうだと思うけど、曲を書くのもそういう夢見てる状態に近いと思う。
その状態に自分を持って行くとか、夢だとわけがわからないだけなんで、そこを調整するとか整理してなんか意味の通るものにする作業ってのが、例えば「韻を踏む」とか「サビにこのフレーズを持ってくる」とかそういう作業で、そこは技術的な操作を意図的に行ってると思うけど。

で、こっからは「恋愛」も「女性」もその他の「君」も自分(というか歌の中での一人称的存在)のことも、歌の中の物語や舞台装置をひっくるめての話です。

おおまかに言って、僕は歌の中で実際に体験したり見聞きした「事実」を伝えたいとは思ってないのです。乱暴に言ってしまえば事実なんてどうでもいい。
かと言って、たんなる「作り話」をしたいわけでもないのです。

表現したいことというのは、自分が何かを体験したり見聞きした時に生まれた「気持ちの空気」とかある種の考え。
なので、それがうまく伝わるように、あっちから事実、こっちから創作と持ってきて一曲を書くというのが近いかもしれない。
そして、それを聴いた人が、それぞれの感覚で受け止めてくれればいいなと思うのです。
なので、作るときも歌うときも自分の気持ちは込めますよもちろん。

そこで僕が作った料理を「おいしい」と言ってくれると幸せ。
うーんと、できれば聴いた人にとって親密ななにかを感じてもらえるようにとか、ちょっと気取った言い方をすると「その人の気持ちに寄り添うような」形で受け入れてもらえればいいなと。

えっと、さっき例に出した『ウキウキライフ』だけど、これのレコーディングした時に、サポートしてくれたミュージシャンの一人は「この曲ってピクニックだなって思いました」と言ってくれた。別なミュージシャンは「キャンプファイヤーの歌だ」と言っていた。聴いてくれた方の中で「アレ聴いて家まで歩いて帰りたくなった」と言ってくれた方もいる。全部正解。

それは「おいしかった」とか「スパイスが効いてる」とか「肉が柔らかい」とか言ってるようなものなので。

あとは、曲によって事実の割合が高かったり、創作度合いが高かったりというのはある。
おそらく100%事実のみってのはないと思うけど。

例えば「オレはこうだぜ!」的な曲でも、実際の自分ではなくて、実際の自分もふまえつつ「こうありたい自分」が含まれてたりとかね。

ラブソングも実体験に基づいたものもあれば、人の体験談とかもあるし、そういう諸々の中に映画のシーンを盛り込んだりとか。
何かを表現したいために、恋愛感情はないけど特定の女性をモデルにして恋愛感情持ってるような設定を想像する場合もあるし。

さっきの熊本に行った時の事を歌にしたっていう『神様の調べ』もですね、事実だけを書いてるわけではないし、体験した時系列に並んでるわけでもない。ただ、ああやって書いた方が事実を並べるよりも「感じた事」がちゃんと表現できると思ったのでそうしてるわけです。

もうちょっと説明しましょう。

女性でもそうじゃなくても「君」というやつ。
男の場合もあるし、子供の場合もある。さっきも言ったように恋愛感情ない女性を恋人のように描く場合もある。ラブソングのスタイルをなにか恋愛とは関係ないものを表現するために採用する場合もある。
なんちゅうの? 恋愛体験を通して身についた人生訓みたいなものとか、恋愛を通して知った世の中のこととかあるでしょ? 共通体験としても恋愛とか失恋って、表現したい気持ちの空気を共有する入り口として分かりやすい気もするし。

例えば、曲によっては限定された実在の人物一人だけを「君」として書いている場合もあれば、それが架空の人物である場合もあるし…。
ある曲の場合は、まずパリの爆弾テロのニュースを見てその被害にあった方の近親者の事とか、自分の知り合いでちょっと個人的な問題抱えてる人の話を聴いたりとか、震災で被害にあった方のことを見聞きしてとか、散歩中に公園のベンチで一人でうつむいて明らかに泣いていた男の子を見かけてとかで、そういう人たちを全部思い浮かべて「君」として書いてる場合もあるんですよ。
そういう人たちに同じこと思って、それを「あなたたち」という形ではなくてちゃんと一人一人にシンパシーを持って伝えるものにするのに「君」という言葉を選ぶのね。
で、それはライブとかで曲を聴いてくれる「君」にも伝わればいいなってか、同じようなものを必要な人もいるかもしれないしってことで。下手すると、その「君」の中には自分自身も含まれてたりする場合もある。
自分が言われたいことを自分で書いてたりね(笑)

あとはアレです。
「神様」ってのも語弊があるんだけど、なんかそんな精神的な存在とか「霊性」のようなものを「君」と書いている場合もある。
コレはね、ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」って曲あるでしょ?
あの曲聞いてサビに入るところの「Daring Daring Stand by me」って部分、訳すると「愛おしい人よ私の側にいて」って感じの。あそこを「My load Stand by me」つまり「主よ私の側に」って言い換えると歌全体がゴスペルになっちゃうのよ。他の歌詞変えなくても。興味あったら全体の翻訳探して「Daring」だけ「My load」に換えてみて。

それは僕の勝手な解釈だけど、自分では「発見した」と思ってて、その勝手な発見を参考にして女性に対する性的なことに解釈されそうな内容に「霊性に対する聖なる気持ち」を含ませてるものもあります。
料理で言えば「隠し味」かな?

で、例えばシチューとか作るんでも、野菜とかを大きめに切ってゴロゴロ入ってるものとか、細かく切って煮込むに煮込んで原型が確認できないものもあるでしょ?
あんな感じで曲に入れるいろんな事柄(「実体験であるじゃがいも」とか「想像したにんじん」とか「何かの研究書で読んだ玉ねぎ」とか)がわりと具体的に言葉に現れてるような野菜ゴロゴロのやつと、全部が抽象表現になった煮込んで溶けちゃって原型わからなくなってるのとか、全部入ってるけどにんじんだけでかいとか、作り方によって違う。でも「おいしい」と言われるシチューを作ろうとして時と場合でそういう作り方を変えるのね。

で、これもよく紹介してるけど『ワルツ』という曲は、各文節を3文字ずつで統一する、三拍子の曲にする、ワルツというタイトルにするということを決めてから中身を作って行ったんだけど、これは「このフライパンを使って」「このスパイスで」「パスタ料理を作る」と決めてから、食材と調理方法を考えたようなものかな? こういう「形を決めてから中身にとりかかる」場合もあるけど、中身の作り方は他と変わらない。

現実なのか創作なのかって話でもう一個例えを思いついたけど
さっきも書いたように、伝えたいのは「気持ちの空気」で、それが聴く人にとって例えば「なんか元気になる」とか「感動した」とかでもいいんだけど、気分の良いものになって欲しいと思ってるのね。
で、映画もそういうものじゃないですか。
たまたま思いついたのがどちらもトム・ハンクスの主演作だけど
まず「アポロ13」ってのがあって、アレは大筋で実話なわけです。月面着陸船を飛ばしたけど、トラブルがあって無事に帰還できるかどうかって話。
で、実話なんで、ちゃんと帰還できてクルーも無事だったのはわかってる話なのね。要するに「行って帰ってくるだけの話」。

でも、そんな調べればわかる話をなんで娯楽映画にしたかって、そこに事実を調べて分かりましたってことではない感動だとか、人間のあり方への提言とか、信頼関係とか愛情とか、そういういろんな言葉で説明できない、記録を読むだけでは受け手の「気持ちに寄り添う」ことができないものを表現したくて、題材として選ぶわけじゃん。
で、それをより受け手にリアルに感じてもらうように、事実だけじゃなくて創作も入れるわけだよね? まぁ、事実だったのかもしれないけど演出として何をチョイスするのかってところに創作意図は働いてる。

例えば好きなシーンは、毎回打ち上げの時には首席管制官の元に奥さんが手作りのベストを届けて、それを着用したら周囲から拍手が起こって打ち上げ作業が開始になるとか、主人公が帰れるかどうかわからないと知らされた母親が「あの子は例え洗濯機を操縦したとしても必ず着陸成功させるよ!」と言ってのけるとか。これ創作とか演出ってことになると思う。

今度は、フィクションである「フォレスト・ガンプ」
あれもまた物語を通して表現する、受け手に届けようとするのは同じようなことなんだと思う。そしてフィクションの中に、実写(事実)のニクソンとかジョン・レノンとかスマイルバッヂのブームなんかを盛り込んで主人公と絡ませるわけです。それで作り話を受け手の現実体験(の感情)とリンクさせていく。


つまり、曲もモノによってやり方はいろいろだけど、目的は同じってことだと思うのよ。

で、僕としては自分が聴く側になっている時に、「作者がどうやって作ったか?」ってことよりは「作者が何を表現したか?」とか「それを自分がどう受け止めたか?」ってことの方が大事で、「作者がどうやって作ったか?」を知ることで、その楽しみが薄れる場合もあるなと思うんですが、その辺はどうなんだろうね?

例えば、小田和正がオフコース時代に作った「言葉にできない」というのは、僕自身はデビュー前から一緒にやってきたメンバーが脱退することになって、いろんな事情もあって引き留めることもできなかった小田さんが、そのメンバーに向けての謝罪とか惜別とか感謝を込めてるもんだと思っている。それを「自分がこうです」ってことを知ってもらうために書いたんじゃなくてそこに生まれた気持ちの空気を表現したくて、そして多くの人の気持ちに寄り添えるものとして受け取ってもらえるように「恋人との別れ」を連想させる物語にしたんじゃないかなって。

小田さん本人がそう言ってたわけではないから、事実は知らないけど、僕はそう解釈してます。勝手な憶測。

で、同じ「言葉にできない」を聴いてですね、やはり別れた自分の恋人のことを思い浮かべてその時の自分の経験とリンクさせて涙する人もいたり、それが自分が捨てた相手だったり自分を捨てた相手だったりとか、親に引き裂かれたとか人によっても違うだろうし、中には死別した友人を思い出すという人もいるのです。

なので、僕の曲聴いた人がなんかの曲で「あぁ、辻はこういう恋愛経験があったんだな」とか勝手に思う曲があっても構わないですよ。そういう聴き方が楽しいのなら、そうしてたくさん聴いていただければ。
そして、その同じ曲で別な方は自分の昔の恋人思い出したりとか、片思いの相手のこと考えたりとかあるわけですよね?


自分の曲の具体的な解釈の例で言うと、とあるシンガーソングライターの女の子と曲作りの話をしてた時に、僕が書いたあるラブソングについてその一部のフレーズに「自分がそうやって言われてるみたいで救われた気持ちになる」というのがあった。これ、彼女はこの曲で歌われる「君」に自分を重ねてるんだね。ただ、僕に言われて救われたとか嬉しいとか思っているわけではなくて彼女の恋人(がいるのかどうか知らないけど)とか想い人(いるのかな?)だったりとかもしくは特定の誰かじゃなくて「そう言ってくれる、自分を好きになってくれる誰か」を漠然と想定してるのかもしれない。
その同じ曲を知人の男性は「昔付き合った女性を思い出す」と言っていた。この場合は彼は歌の主人公の方に自分の気持ちを重ねてるのだね。
この曲の「君」がとる行動を描いたワンフレーズを取り出して「自分も同じだ」って言う方もいるし。

あと『おやすみ、君は自由だ』を当時中学生だった子が聴いて、その子はおそらく思春期の情緒不安定な時期にあったんだろうけど、若干不眠症みたいな感じだったらしいけど、この歌を聴いた夜に毛布にくるまって、歌に出てくる「ふかふかの毛布〜」って歌いながらちゃんと眠れたって話を親御さんから聴いた時に非常に嬉しかった。

この前はラジオに出た時にアシスタントの女性が『座右の銘』を聴いて「今、一番言って欲しかったことを歌ってる」って言ってくれたり。

なんか緊張に負けそうになるけどやらなきゃならないって場面で『自画自賛』を思い出したんですよとか。

そういうそれぞれの体験や思いに、その歌の持ってる「気持ちの空気」を寄り添わせてくれる受け止められ方が一番嬉しいのです。

それは、僕自身もそうやっていろんな人の歌を聴いて育ったからなんだけど。その一つがよく言う「佐野元春ってなんでこんなに俺のこと知ってるんだろう?」ってやつなんだけど(笑)

なので、作り手の側から「これはこういうことがあった時にこんなことを思った曲です」とか「これは想像で書いた歌なんですけど、2コーラス目に出てくる君って言うのは昔付き合ってた子で」みたいな事はあまり答えたくないな〜と思うのです。

どうやったって、どんなに稚拙なものにだって、創作だろうと実話だろうと、作り手の中の何かってのは隠そうとしても自ずと現れているものだとも思うし。



随分長々書きましたが、こういうので答えになってて納得してもらえたでしょうか?

意に沿ったものかどうかはわからないけど、おかげで自分のやってることのちょっとした整理ができたので、ありがたいです。

あとはくどくど書いたのは、こういう書き方してるってのを知ってもらって「どの部分がどうやって書かれたか」ってのを想像してみるのも曲の楽しみ方としてアリなのかな? とも思ったからでございます。

いずれにしてもそんなに大したことをやっているわけではないので(大したことやってたら、多分ヒット曲の2,3曲はあるだろう)、気楽に楽しんでいただければ幸い。

あと、質問の意図に沿ってなかった場合は、すみませんがもう一回「こういうことが聞きたかった」ってのを教えていただけると助かります。

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