久々に散文詩2016-06-10 Fri 20:47
魔女狩りの季節
さぁ、魔女狩りの季節だ 支度を始めろ 今すぐオマエも連なるのだ 王の国の善良なる民として オマエも魔女狩りに行くがいい オマエの退屈に倫理の兜を被り オマエの苛立ちに道徳の鎧を纏い オマエの鬱憤に清廉のマントを靡かせ オマエの嗜虐に正義の旗を掲げ オマエの不安に善意の槍を持ち 魔女を狩る兵士となり 風潮という名の馬車に乗り突き進め どのチャンネルも見落とすな 車内広告の見出しに目を光らせろ インターネットは繋いでおけ 西の村に魔女がいる その醜い姿を現わすまで 縄で縛りつけて釜茹でにしろ 東の村にも魔女がいる 息の根が止まるまで火炙りにしろ 北の村から知らせがあった 許しを乞う者の爪を 一枚一枚剥いでやれ 南の村の魔女は「自分は違う」と訴え続けてるぞ 身ぐるみを剥がし 逆さに磔け 白状するまで身体中を切りつけろ 魔女を許すな 魔女を殺せ ただし充分な罰を与えてからだ オマエは何も考えなくていい オマエは善良なる民だ オマエの虚無は魔女どもの悲鳴で満たされるだろう 気をつけろ 魔女をかばう者もやはり魔女だ オマエのモラルで奴の家のドアを破壊し踏み込め 引き出しという引き出しをすべてぶちまけ 魔女の証拠を暴き出せ もしも証拠が出てこないなら お前が作って忍ばせておけ 魔女をかばう者は魔女なのだから 魔女の家族も魔女だ 魔女の友人も魔女だ 魔女の隣人はどうだ? よく思い出してみろ やはり魔女ではないか? あの時の仕草 あの時の表情 魔女と呼ぶには充分だ 告発しろ アイツの発言を アイツの愛読書を アイツの性癖を アイツの子供時代の行いを アイツの食生活を アイツの交友関係を アイツの私信の中身を テレビ局に通報しろ 週刊誌に売り込め インターネットに書き込め 善良な民の一員として 王の国の兵士として オマエの正義を証明するのだ さもなくば オマエも魔女に取り込まれるぞ よく目を凝らせ 倫理に反する者は魔女だ 道徳を乱す者は魔女だ 清廉を汚す者は魔女だ 正義を壊す者は魔女だ 善良なる民よ 王の定めた倫理に反するな 王の説く道徳を乱すな 王の国の清廉を汚すな 王が掲げる正義を貫け 王の国の兵士として戦うのだ 魔女を根絶やしにするのだ 魔女の存在を知らせてくれる テレビには対価を払え 週刊誌にも対価を払え インターネットに課金しろ 王の国の砦となる 企業に充分な対価を払え エネルギー開発の恩恵に感謝しろ 王を信じ 王を尊び そして税を納めろ 王の国の善良なる民よ 魔女を狩り続けろ 王の国の兵士よ 考えるより先に オマエの兜を オマエの鎧を オマエのマントを オマエの旗を オマエの槍を より磨きあげろ 風潮という名の馬車から振り落とされるな そして オマエの下着についた不浄な染みを 決して誰にも悟られるな スポンサーサイト
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