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海月屋・辻の日々

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いつかインタビューしてくださいね

もう10数年前のことになるが、それまでの定職を辞めたオレはフリーライターとして新聞やローカル発信のニュースサイトなどにコラムを執筆したり、小さなライブのPAをやったり、自身の音楽活動をしたりしながら、かつての上司であった石川さんが始めたCDショップ『音楽処』でもちょこちょことお手伝いをしていた。
店を手伝ってたのはラジオの制作に関わる前だから、ほんの1、2年くらいだったと思うけど。

そのころ丁度、ブルース・スプリングスティーンのそれまで発表したアルバムが全作紙ジャケットで発売されて、それを店頭で全部ジャケットが見えるように展示するスタンドを手作りで用意して、各作品ごとに自分で簡単なキャプションを書いて展示してたのね。

で、ある日の昼間に店にいたら、それをじっと眺めていた男性客がおりまして。他にも自分がオススメのアーティストのアルバムにキャプションつけてたのとかも読んでたりして、しばらくしてからこちらにやってきて、「洋楽のキャプションは誰がつけたんですか?」と。
自分が書いたのだというと、とても良く書けていると褒めていただいて、そのあと「スプリングスティーンのあのシリーズのライナーノーツ、全部僕が書いてるんだよ」と教えてくれた。

つまりその男性は、音楽評論家の長谷川博一さんであった。

彼のことは音楽誌などでよく知っていた。スプリングスティーン、佐野元春などオレが興味を持っているアーティストに関する評論やインタビューをよく書いていて、彼の書いてものはそうとは知らずにいたものも含めてほとんどを繰り返し読んでいたと思う。
とりわけ、特に雑誌の売れ行きに貢献するとも思えないHEAT WAVEに関するものが掲載されることは滅多になかったのだが、たまに見つけて読むと、大抵それは長谷川氏の手によるものだったと記憶している。

彼の著作に『ミスター・アウトサイド わたしがロックをえがく時』というのがあって、確か10人くらいのソングライターの曲作り、主に歌詞に重点をおいた手法に関してのインタビュー集であったが、これは非常に優れたインタビュー集だと思っている。
発表された当時、オレはまだギリギリ学生だったと思うが、アーティストの生い立ちだのプライベートがどうだのって記事よりもよっぽど有意義な話を読むことができた。今でもそうかもしれないが、ちゃんと作品に向かう姿勢に言及するような内容のインタビューって実はそんなに多くはないように思える。

そういうこともあって、長谷川さんの名前は自分にとっては結構「雲の上の人」みたいなイメージがあったのだ。

そんな人に自分が書いたものを褒めてもらうってのは非常に光栄なことである。

彼は小樽出身ということで、その後も何度か帰ってきた際には連絡をくれて、食事したりした。
そんな中で「これからは、ローカル発信の音楽が盛り上がってくるだろう」みたいな話で意見が一致したりして「辻くんから見て、北海道とか札幌の音楽の特徴みたいなのはなんだろう?」とか聞かれて、自分なりの意見を伝えたりしたのだが、その後、不定期刊行ではあるが彼が編集長を務める音楽誌の第2号を出すので、原稿を書いてくれないかとの依頼があった。

それが「北海道のローカルな音楽状況を紹介する」というテーマで、何組かのアーティストを紹介しつつ、北海道の音楽に共通する特色のようなものを伝える文章をといったオファーだった。

ほとんど写真もない、おおよそ2ページ分をまるまる任せていただいた。
そこでデビュー前の福原美穂ちゃん(確かインディーズで最初の作品を発表した頃)を始め数組のアーティストを紹介しながら書いたのだが、おそらく全国発売の音楽誌で福原美穂を紹介したのは、オレが世界で一番最初である。自分の中の自慢の一つだ。

長谷川さんは、特に細かな指示も出さず、オレが自由に書きあげた後も大きな直しもなく、そっくり書いたままの状態で掲載してくれた。

自分が熱心に読んでいた書き手から認められ、仕事を依頼され、ギャラをいただくという非常に嬉しい体験だったのだが、それ以上に嬉しかったのは、「趣旨やスペースの都合上、誌面では取り上げることができないから」と、わざわざ自分の書く編集後記の枠を使って、オレ自身の作品について書いてくれた事だった。

オレが好きなスプリングスティーンや佐野元春やHEAT WAVEにの作品ついて論じている人が辻正仁の作品について述べているのである。これはちょっとびっくりしたし、光栄であった。
もちろん、ちゃんと良い評価をしていただいていたのだが、もしかしたらけなされていても、彼がオレの音楽について語っているだけで嬉しかったかもしれないなと思う。

その後はちょっとコチラがいろんな事でバタバタしていたりで細々と連絡は取っていたものの、途中で電話番号やアドレスを変えたりってこともあり、そのお知らせをしていなかったことに気づくのに数年経過していて、オレの生活も随分変わってしまって、なんとなくタイミングを逸してしまっていた。
たまに彼の書いたものを見かけては「連絡しとこうかな」とか思いつつそのまま月日が流れてしまった。

今日、長谷川さんが亡くなったとのニュースが届いた。なぜだったのかは知らない。

表に出てくる人ではないので、大きく取り上げられることもないのだろうが、オレの同年代前後で音楽好きな人(あるいはプロレス好きな人)であれば、どこかの誌面であるいは誰かのアルバムのライナーノーツで彼の書いた文章を読んでいる方は多いはず。自分の好きなアーティストが出演したラジオ番組で話をしている相手が実は長谷川さんだったなんてこともあるだろう。

個人的には、「不義理をしてしまったなぁ」という思いがある。
うん、残念だ。

惜念と感謝を込めて、ご冥福をお祈りします。


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