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海月屋・辻正仁『短めでお願いします』

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引き出しが増えた夜

本日、『毎月海月Vol.8』。平日の19時、悪天候という中、お客さんがいて何より。

少し早めにアミナに行ったら、久し振りにモヒちゃんに会えた。
かなりお疲れの様子であったが、”クマニア”となにやら話し込んでた。
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面白いもので、現在彼女は出勤時にタックさんの番組を聞くのが癒しになっているらしい。

さて、ライブ本番。
いや、本当に贅沢な気分でやらせていただいた。
ギターの弾き語りでは出来なかったこと、村山さんのキーボードだから、加奈ちゃんがヴァイオリンで参加してくれたからこそ実現できたことをズラっと。

まずは、セットリストを紹介してから解説いたしましょう。

~セットリスト~

・君が誰でもかまわない(ポエトリー・リーディング)
・カラッポの青空
・スマイル・スマイル
・時の過ぎゆく神田川流し
・うちあけばなし
・人生の折々に
・火曜日の朝の流れ星(ポエトリー・リーディング&シンギング)

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コレがやりたかった。ポエトリーリーディング。
50年代後半のビートニクがカフェなどで展開したスタイル。
詩を朗読して環境音楽的な音楽を流すのではなく、ジャズプレイのビートを起爆剤に言葉を発する。言葉と音のインプロビゼーションによる刺激の応酬。
そのために、今回は数年前に書いた散文詩『君が誰でもかまわない』を引っ張り出してきた。
村山さんはこうしたスタイルについての知識はなかったんだが、軽く趣旨を説明してセッションしてみると、たちまちに理解してくれた。そして、そのままゴスペル調にアレンジした『カラッポの青空』へ。
これもまた、最初に曲を着想した時のイメージに近づいた演奏。間奏は『アメイジング・グレイス』。

ま、どっちも9.11があって書いた作品なんで、ちと重くなったかもしらんが、ここでムードを変えて『スマイル・スマイル』。
コレは以前に村山さんと演奏するときに彼女に選曲とアレンジを任せたら、この曲を選び、これまたギター弾き語りではできなかった着想時のイメージを僕から何の注文もつけなかったのに実現してくれたものである。いやぁ、楽しい(笑)。

さて、ここからクラシック・ヴァイオリニストの長谷川加奈ちゃんを迎え入れての演奏。
70年代の名曲『時の過ぎゆく神田川流し』である(笑)。
コレもリーディングとは違った意味で以前からやりたかった事だ。
ほとんどの方がヴァイオリンのイントロを聞けば『神田川』と分かるイントロのフレーズから始まり、歌い出しの「アナタは~」の後から、ジュリーの『時の過ぎゆくままに』になって、間奏でそのまま『時の~』のリフを弾いてもらい、二番の「アナタは~」から『神田川』に戻って、サビに行くかと思ったところで『精霊流し』の締めを歌って、そのままこれもヴァイオリンのフレーズが印象的な『精霊流し』のエンディングで終了という、”ネタ”だ。
これまで加奈ちゃんが参加したほかの方たちの演奏を聴くと、やはり正規のクラシックの修練を積んだヴァイオリニスト起用ということもあってか、とても技術を要するものや、多少上品というかアカデミックな心地よさを求められていたんじゃないかな? という印象があった。
でも、それに負けず劣らず今回の”ネタ”もキチンとした演奏力が要求されるものなんである。おそらく、今回僕は「長谷川加奈のヴァイオリンに対して最も贅沢な使い方をした男」として歴史に記されるのではないかと思う(笑)。
加えて、この三曲はテンポはそう変わらないんだが、リズムの取り方がそれぞれで違うのである。それをスムーズに展開していけたのは”臨機応変女王”の村山由美子のプレイあればこそで、言い方は悪いが、「シロウトにはできない確かな技術による下らなさ」がここにある。

そして次にはやはり加奈ちゃんの演奏力というか表現力の素晴らしさも紹介したく、さらにこの編成じゃないと僕の気分が乗らない『うちあけばなし』を。
村山さんは、レコーディング時よりもソウル風味なピアノで、そして弦のアレンジも引き受けてくれた。

さらに『人生の折々に』では、エンディングの譜面はナシ。「譜面さえあれば」初見でも弾きこなせる加奈ちゃんにフレーズを作らせ、しかもエンディングの小節を決めずに、その場の演奏者同士の呼吸で終わらせるという、彼女にとって初めての経験をしていただく。ま、初めてなんでとても余裕はなかっただろうが(何せ、彼女の音楽観にこうした要素はこれまでなかったハズだから)、僕のワガママで「素の長谷川加奈の音色」が聴いてみたくて、このようなことをやってみたのです。

そして、最後にまたポエトリーリーディング。
でも最初とはアプローチの仕方が違う。
実はこの『火曜日の朝の流れ星』はコード進行もメロディーもちゃんとある曲を作っておいて、あとからメロディーを外したのです。そして、感情の赴きによってメロディーを歌ったりして。
歌の歌詞が持つ役割からグルーブを抽出してみるという試みであるし、メロディーのない言葉を音楽の空気として機能させてみようという試みでもある。コレ、慣れたら相当気持ちよいだろうなという感触は得た。
この曲、三人でやったリハの当日に書いた曲で、村山さんは僕の「歌詞とコードしかない紙」を渡されることに慣れているが、加奈ちゃんはコレも始めてのこと。
僕の手渡した歌詞に「ここは弾く」「ここは弾かない」という印を付けたものだけが譜面の代わりである。でもね、見込んだとおり、楽曲の構成を素早く把握し、他者の演奏に即座に反応し、曲の持つ空気感を自分の感性で捕らえて表現するということができる人だった。
演奏については僕は一切なにも言う必要がなかったのである。それで僕のイメージしたものをキチンと音にして表現してくれていたと思う。

単に「セッションで音を作る」というのは、ヘタをすると「ひとりよがりの集まり」がガチャガチャと音を出しているだけのものになる。セッションがクリエイティブなものであるためには、やはりそれぞれの感性や理解力、瞬発力、技術に応用力、そして空気感の共有などが必要で、そういった意味からも今回の演奏はとても刺激的だった。

もの凄い自画自賛になるけど、今回のライブを聴かなかった方は損してると思う。

と、思えるくらい僕自身にとって新鮮かつ刺激的な経験であったのだったのだった。
改めて、村山さんと加奈ちゃんには、こんな贅沢な気持ちで構想通りのトライを実現させてくれたことに感謝したい。

マンスリーの中では、今までで一番静かなステージ、そして一番エキサイティングなライブでしたよ。





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